気づくのが遅かった親心

もう5年も前の話かな…

人前では殆ど泣いたことのない私が、生涯で一番泣いたのはお袋が死んだ時だった…

お袋は元々ちょっと頭が弱く、よく家族を困らせていた…

思春期の私は、普通とは違う母親に腹が立ち邪険に扱っていた…

非道いとは自分なりに認めてはいたが、生理的に許せなかった…

高校を出て家を離れた私は、そんな母親の顔を見ずに大人になった…

その間、実家に帰ったのは3年に1回程度だった…

私もそれなりの家庭を持つようになったある日、お袋が危篤だと聞き、急いで病院に駆けつけた…

意識が朦朧として、長患いのため痩せ衰えた母親を見ても、幼少期の悪い印象が強くあまり悲しみも感じなかった…

そんな母親が臨終の際、私の手を弱々しく握りこう言った…

「ダメなお母さんでごめんね」

精神薄弱のお袋の口から出るには、あまりにも現実離れした言葉だった…

「嘘だろ? 今更そんなこと言わないでくれよ!」

間もなくお袋は逝った…

その後、葬式の手配やら何やらで不眠不休で動き回り、お袋が逝ってから丸一日過ぎた真夜中のこと…

家族全員でお袋の私物を整理していた折、一枚の写真が出てきた…

かなり色褪せた何十年も前の家族の写真…

まだ私がお袋を純粋に大好きだった頃…

皆幸せそうに笑っている…

裏には下手な字(お袋は字が下手だった)で、家族の名前と当時の年齢が書いてあった…

それを見た途端、何故だか泣けてきた…

それも大きな嗚咽交じりに…

いい大人がおえっおえっと泣いている姿はとても見苦しい…

自制しようとした…

でも止めどなく涙が出てきた…

どうしようもなく涙が出てきた…

私は救いようがない親不孝者だ…

格好なんて気にすべきじゃなかった…

やり直せるならやり直したい…

でもお袋はもう居ない…

後悔先に立たずとは正にこれのことだったんだ…

その時、妹の声がした…

「お母さん、笑ってる!」

皆が布団に横たわる母親に注目した…

決して安らかな死に顔ではなかったはずなのに、表情が落ち着いている…

薄っすら笑みを浮かべているようにさえ見えた…

「みんな悲しいってよ、お袋……1人じゃないんだよ…」

気が付くと、そこに居た家族全員が泣いていたんだ…

あれから私は事ある毎に、両親は大切にしろと皆に言っています…

これを読んだ皆さんも、ご健在であるならば是非ご両親を大切にして欲しい…

でないと、私のようにとんでもない親不孝者になっちゃうよ……

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次