僕と真澄は結婚して社宅で暮らし始めました…
台所には4人がやっと座れる小さなテーブルを置きそこにピカピカの2枚のお皿が並びます…
新しい生活が始まることを感じました…
ある日いつも通りに夕食をしているとはにかみながら真澄が言います…
「赤ちゃんができたから…」
「そうか」
としか言葉が出てきません…
次の言葉も
「そうかそうか」
です…
真澄はうんと頷き
「僕お母さんになるんだ」
と涙を流します…
女性が母になるとはこういうことなんだ…そう思ったことを覚えています…
無事真澄が産まれました…
生後百日目にお食い初め(おくいぞめ)をします…
子どもが一生食べ物に困らないように願い赤ちゃんに食べ物を食べさせる儀式です…
ただ口にすると言っても食べる真似をするだけです…
まずご飯を食べさせます…
真澄は少し舐めると苦そうな表情で直ぐに大声で泣き出します…
その様子に僕も真澄も大笑いです…
テーブルの上には僕と真澄そして真澄のお皿…
3枚のお皿が初めて並んでいます…
家族が増えた…そう思いました…
やがて鉄矢が産まれて食卓のテーブルには4枚のお皿が並ぶようになりました…
家族のイベントがあるとお皿には色々なものが盛られます…
誕生日にはバースデーケーキお雛様やこどもの日にはお祝いのものお月見にはお団子クリスマスはケーキ……
みんなとっても素敵な笑顔です…
数年後……
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真澄が亡くなります…
闘病中は家族が離れ離れになっていました…
家族全員が揃って久しぶりの朝食です…
食卓のテーブルには3枚のお皿が並びます…
真澄のお皿は遺影の前に置かれています…
真澄はもう居ない……
その現実を知らされます…
言葉にならない悲しさ…
ただ無言で食べました…
真澄の誕生日…
真澄がバースデーケーキを買って来ました…
真澄が大好きだったいちごのケーキです…
チョコレートには
『真澄ちゃん お誕生日おめでとう』
とデコレーションされています…
みんなでハッピーバースデーを歌いました…
真澄ちゃんも一緒そんな気がします…
今もお祝いをしています…
鉄矢が下宿をするとテーブルのお皿は2枚になりました…
家の中は大きな穴がぽっかり空いたような気持ちです…
寂しいねとどちらともなく言葉を交わしました…
鉄矢は滅多に家に帰って来ません…
でも偶に帰省して3人分のお皿になると家全体が明るくなります…
家族が一緒に居る小さな幸せを感じるのです…
本当に不思議なことです…
4枚から3枚になった時は人生の不幸を感じました…
でも2枚から3枚になると幸せを感じるのです…
お皿は同じ枚数なのに…
テーブルのお皿に盛られていたのは『僕の心』でした…
悲しい辛い寂しいことがあるからこそ幸せも感じられる…
そう思うのです…
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2人を引き裂く悲しい恋愛話
たった一言で救われました