大切な家族ができたんです。私が結婚したのは20歳の頃だった…当時嫁は21歳…学生結婚だった…
2年ほど貧乏しながら幸せに暮らしていたのだがある時妊娠が発覚…
私は飛び上がるくらい嬉しく1人ではしゃいでいた…
「無茶はしないで」と言う嫁の言葉も無視して次の日には退学届けを提出したんだ…
叔父さんの経営している会社にコネで入れてもらった…
とにかくやる気満々で『働きまくって子供を元気に育てるんだ!』ってなもんだった…
いま考えても単純だったと思う…
しかしそんな幸せも長くは続かなかった…
その後暫くして交通事故で嫁がお腹の子と1緒に死んだのだ…
この辺りは本当に今でもよく思い出せない…
何やら言う医者に掴み掛かって殴り飛ばしてしまった事嫁を轢いた車の運転手の弁護士を殴り飛ばした事は薄っすら覚えている…
無茶苦茶だった…
それでも何とか葬式を済ませ手続きなどもこなし何日か実家で休んだ後家に戻った…
それからは日付の感覚も無くただ呆然としていた…
テレビも視ずただ米を炊いて食うそれだけの毎日だった…
自分が鬱なのだとか落ち込んでいるのだとかそういう思考も無かった…
自分でも状況がよく解っていなかったのだと思う…
何となくカッターで指先を軽く切っては治るまで放置するといういま思うと殆ど病気のような事を繰り返していた…
夜中に突然意味も無く涙がぼろぼろ出て来たりもした…
死のうという事すら思い付かなかった…
当時の事を友人や親に聞くと様子伺いの電話などにはきちんと受け答えしていたというのだがあまり覚えていない…
恐らくそんなこんなで半年は生活していたと思う…
そんなある日夢を見た…
どんな夢だったかは殆ど覚えていない…
とにかくひたすら謝っていたように思う…
ふと目が覚めて
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『あぁ…何か悪夢を見たな』
と身体を起こすと目の前の光景に心臓が止まるかと思った…
目の前に小さな女の子がちょこんと座って私を見ていた…
『何だこれは夢か? まだ夢の中に居るのか?』
そう思いながら自分の心臓の鼓動で視線がぐらつくのを感じた…
咄嗟に水子の霊だと思った…
死んだ私の子が化けて出たのだと…
その時が初めて自分の嫁と子供が死んだ事をちゃんと認識した時だったように思う…
その子が
「大人なんだからちゃんとしなきゃだめなんだよ!」
と私を叱り付けた…
もう混乱に次ぐ混乱だ…
汗がダラダラ出て心臓麻痺で死ぬんじゃないかと思った…
その時部屋のドアから大慌てで隣の部屋の奥さんが入って来た…
「すみません!この子勝手に入っちゃって…」
そこでやっと現状を把握した…
よくよく見ればこの子は隣の家の子供で嫁が居た頃は何度も会話を交わした事のある子だった…
ドアを開けっ放しにして寝ていたところに入って来た実在の人間だ…
幽霊じゃない…
ああ違うのか・・・
と思った瞬間何だか目の前の膜が剥がれたような感じで私はその子にしがみついて号泣していた…
「すみません」と「ありがとうございます」を意味不明に連発していたと思う…
後から聞いた話ではそこの1家は引き篭もっていた私の事を心配してくれていたらしい…
それで何度も夫婦で何をしてあげたら良いかと相談していたのだとか…
その相談を1人娘のその子は聞いていて落ち込んだ大人を励ましてやろうと活を入れに来たらしい…
凄い人だなと…
とにかくその日が切っ掛けで私はカウンセリングに通い始め2ヶ月ほどで何とか職場復帰する事が出来た…
届けも出さずに休んでいた私を休職扱いにしてくれていた叔父には本当に感謝している…
隣の夫婦とも仲良くなり寝起きの悪い旦那を起こしてくれとか言う無理のある理由で毎朝家に呼ばれ朝飯をご馳走になった…
とにかくもう私の周りの人間が神様のように良い人達だった…
私は救われたし嫁と子供の死をちゃんと悲しむ事が出来た…
その娘さんが先月結婚した…
(既にその隣室の親子はマイホームを建て引っ越して行ったのだが今だに仲良くしてもらっている)
親戚が少ないからという理由で式にまで呼ばれ親族紹介の後その子と話す時間があった…
私とその子は口が悪い感じの関係で(15歳も年が離れているのに)その日もあまりにも綺麗になったその子に動揺して
「オメーもまだ18歳なのに結婚しちゃって勿体無いな」
などと私が言うと笑いながら
「寂しいのかあんた?(笑)」
などと言いやがるので
「寂しいよ!」
と言ってしまった…
「私は昔お前に助けてもらった…お前のお父さんとお母さんにも助けてもらった…
だからお前の事が大好きだ…だから寂しい!」
と捲し立てるとまた号泣していた…
30歳を過ぎたおっさんがヒックヒック言いながら花嫁の前で号泣だ…かなり恥ずかしい…
気付くとその子も大泣きだ…
新郎側はびっくりしただろうな…
親以外のおっさんと新婦が大泣きしているんだから…
私は今でも結局独り身だがその子が困ったら何が何でも助けてやろうと思っている…
恥ずかしいのでその子には言わないけどな…
もう私にとってあの子は自分の娘みたいなものなのだ…
私の2人目の子供だ…
本当にありがとうありがとうな…いつまでも幸せにな…
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本当に泣ける話を集めてみました・・・。
遠距離恋愛でやっと結婚できました
いなくなった家族の泣ける話