オレが二十歳の時、一緒に上京して同居してた親友がバイクで事故ったんだ。
オレはその知らせを病院から聞きつけて大学から大急ぎで駆けつけた。
親友のKはICUに入っていたが、意識もあって見た目もほっぺに擦り傷があるぐらいだったのでオレは何とか助かったんだなぁとほっとした。「よう」
「おう」
という挨拶の後ベッドの横にあった椅子に腰をかけようとしたらすぐに看護婦に呼ばれた。
「ちょい行ってくるわ」
とKに言うと
「おう」
と言ってKは笑ってた。
看護婦について行くとそこは会議室みたいなとこで、中で待っていた医者に
「今は麻酔してるから痛みはないはずだけど助かりそうもない」
と言われた。
「はぁそうですか・・・」
とアホみたいな返事をした後Kのとこに戻った。
「何だって?」
とKに聞かれるとオレは
「いや、別に・・・」
と一番意味深な返答をしてしまった。
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Kは
「なんだそりゃ」
っと笑っていたがオレははにかむのが精一杯だった。
緊張した時のオレの癖で顎ヒゲを引っ張ってるとKは
「あのさぁ、あの十字架ついてるオレのジッポあるだろ?」
と切り出した。
「あ、うん」
「アレおまえにやるわ・・・あっあとヴィヴィアンのバックもやるよ。
それから・・・あの皮ジャンもやるし・・・てかみんなおまえにやるよ」
オレは「何でそんなこと言うのか」ととぼけようとしたがダメだった。
号泣した。
オレでもこんなに泣けるものかと思いながらガキみたいに嗚咽した。
泣くオレを見て笑いながら「タバコ吸いすぎるなよ」とか「もし中免取るならアソコがいい」とかオレに対しての注意とかどうでもいいこととかをゴチャ混ぜにずっと話続けた。
そして約1時間後・・・。
「オレの母ちゃんと父ちゃんと姉ちゃんにありがとうって言ってたって伝えてな。あとゴメンも。」
と言ってダルそうに
「はぁ~・・・」
と息を吐いて目を瞑った。
看護婦と医者が飛んで来たがやっぱりダメだった。
映画とかベタなドラマみたいな最期がKらしいと思った。
その夜アパートに帰ってKが今朝セットしといた炊飯器を見てまた泣いた。
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交通事故の怖さ
唯一の私の救い