俺の毎朝の日課は、小学校1年の娘と一緒にモノレールに乗る事。
駅までの道は手を繋いで行く。
他人から見ると、いい家庭を絵に描いたような風景だが、実際は違う。
妻とは会話もほとんど無いし、たまに会話をするとなぜか口論になる。
そしてお決まりの展開。
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「だったら、別れるか?」
「いいよ!でも、子供はどうすんの?」
「・・・。」
いつものセリフで言い争いが終わる。
ある日の出社前、読みかけの本を入れようとしてカバンを開けると中に何か入ってるのに気づいた。
「封筒・・・?」
取り出してみると、つたない字で俺の名前が書いてある。
『○○ ○○へ』(○○ ○○は何故か俺の氏名)
娘から俺宛の手紙だった。
いつの間に入れたのだろう?
早速読んでみた。
(原文のまま)
『人のかん字はささえあっていることとぱぱは、わかっていた?わたしはそんなことしらなかった、でも先生から、ならったんだよ。もしぱぱが、しってたらどのときからしったかおしえてね。いつもかいしゃをわたしたちのためにかいしゃをがんばってくれて、ありがと。』
便箋の余白には、「だいすき」という文字が入ったハートがちりばめられてる。
たくさんの消しゴムの跡、大きさがばらばらの字。
でも、一所懸命書いたんだよって思いは痛いほど伝わってくる。
朝っぱらからグっときた。
そして、会話をしない父と母を見てる娘の気持ちを考えると、すごく悲しくなった。
嬉しさと悲しさがごちゃ混ぜになったような気持ちって分かるだろうか?
涙をこらえるのに必死だった。
その日も、いつもの様に二人で手を繋いで駅への道を歩いて行った。
道すがら、娘に言った。
「ひかる。手紙、ありがとうね。」
そう言うと、娘は照れくさそうに笑った。
娘は何も言わなかったが、繋いだ小さな手に少しだけ力が入る。
俺もちょっとだけ強く握り返した。
言葉は無かったが、娘がどんなことを考え、何を言いたかったか分かった気がした。
「照れくさいけど、今日帰ったらあいつ(妻)にやさしい言葉でもかけてみるかな。」
駅で友達と合流して、俺から離れて行く娘の後姿を見ながらそう思った。
今さっきの複雑な気持ちは消え、少しだけ晴れやかな気分だった。
今では妻とは割と仲良くやってます。
娘よ。
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