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友達

二度とない日々

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子供の頃。
今は永遠だと思っていた。明日も明後日もずっとこうして続いていくような気がしていた。
大人になるってことは自分とは無関係だと思ってた。大人っていう生き物は自分たちとは別の生き物だと思ってた。

学校へ行って、友達と昨日遊んだ事を話して。

授業中、女子の手紙を別の女子に渡しながらノートに落書きして。

休み時間、誰かが打ったホームランのボールの軌道を青空の向こうに見上げてた。

昼休み、給食のメニューに一喜一憂して、牛乳早飲み王決定戦に参加した。先生に怒られてからはその目を盗んで開催した。

放課後、今日は誰と何して遊ぼうか。
公園、駄菓子屋、友達の家。僕らは遊びの天才だった。何をやっても楽しかった。誰かの家でした、気になる女子の話。
「いいか?誰にも言うなよ?男同士の約束だぞ?」「う、うん。約束する」「お前から言えよ。」「やだよ。おまえからいえよ。」「じゃあ、じゃ~んけ~ん・・・」
小さな恋は叶わなかったけれど。結局誰にも言わずに今まで守られた、小さな男同士の約束。

夏休みに自転車でどこまでいけるかと小旅行。計画も、地図も、お金も、何も持たずに。国道をただひたすら進んでいた。
途中大きな下り坂があって自転車はひとりでに進む。ペダルを漕がなくても。何もしなくても。ただ、ただ気持ちよかった。
自分は今、世界一早いんじゃないかと思った。子供心に凄く遠いところまできた事を知り、一同感動。滝のような汗と青空の下の笑顔。しかし、帰り道が解からず途方に暮れる。不安になる。怖くなる。いらいらする。当然けんかになっちゃった。泣いてね~よ。と全員赤い鼻して、目を腫らして強がってこぼした涙。交番で道を聞いて帰った頃にはもう晩御飯の時間も過ぎてるわ、親には叱られるは、蚊には指されてるわ、自転車は汚れるわ。でも次の日には全員復活。瞬時に楽しい思い出になってしまう。絵日記の1ページになっていた。

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今大人になってあの大きな下り坂を電車の窓から見下ろす。家から電車でたかだか10個目くらい。子供の頃感じたほど、大きくも長くもない下り坂。
でもあの時はこの坂は果てしなく長く、大きかった。永遠だと思えるほどに。今もあの坂を自転車で滑り落ちる子供達がいる。楽しそうに嬌声を上げながら。

彼らもいつの日にか思うのだろうか。

今、大人になってどれだけお金や時間を使って遊んでも、あの大きな坂を下っていた時の楽しさは、もう二度とは味わえないと。
もう二度と、友達と笑いながらあの坂を、自転車で下る事はないだろうと。あんなにバカで、下らなくて、無鉄砲で、楽しかった事はもう二度とないだろうと。

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