かつて、日本プロ野球の中日ドラゴンズ、広島東洋カープに在籍したアレックス・オチョア選手と、ファンの少年の物語です。少年は脳腫瘍を患い、名古屋の病院に入院中でした。楽しみは地元・ドラゴンズの試合をテレビ観戦すること。もちろん、ドラゴンズの大ファンでした。
ある時、少年の目がテレビにくぎ付けになります。2003年、現役大リーガーだったアレックスがドラゴンズに入団しました。アレックスのプレイ、特に守備はそれまで見たどの選手よりも華麗でした。
たちまち少年はアレックスのファンになり、手紙を送りました。
しばらくしたある日、少年を驚かせることが起きました。大好きなアレックスが少年のお見舞いに来てくれたのです。アレックスは少年の様子を聞き、病気に負けないようにと励ましました。
少年は憧れの選手が自分に会いに来てくれたことに感動し、より一層アレックスが好きになりました。
その後も、時々アレックスは少年のお見舞いにきて、少年を励まし続けました。
二人の間には確かな絆ができました。
2006年秋、少年にさびしいニュースが届きました。アレックスがアメリカに帰国することになったのです。
もう会えないかもしれない、少年は思いました。それどころかアレックスのプレイをテレビで観ることさえできないだろうと思っていました。
2007年6月、アレックスは広島カープと契約し、再び日本で野球をすることになりました。ドラゴンズではないけれど、大好きなアレックスのプレイをまたテレビで観ることができる。少年の心には少し残念だけれど、それより大きな喜びが生まれました。
それからしばらくしたある日、少年は病院の廊下を進んでいました。
病気はまだ完治せず、歩くことができなかったので、少年はずっと車椅子の生活を続けていたのです。
病室へ戻ろうとした時に、廊下を前から歩いてくる大きな男性がいることに気づきました。
少年は一瞬目を疑いました。前から歩いてきたのはアレックスだったからです。
カープの選手になって、もう会えることはないと思っていたアレックスが、今また自分を訪ねてきてくれている。少年の心には驚きと喜びとその他ありとあらゆるうれしい気持ちがわきあがりました。
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数メートルの距離まで近寄った時に、アレックスも少年に気がつきました。
この日、カープはドラゴンズとナゴヤドームで試合を行う予定でした。試合開始までの時間を利用して、アレックスは久し振りに少年を訪ね、その後の様子を聞こうと思って病院へやってきたのです。
少年は、自分を見てとても驚いている様子です。
近づきながら、アレックスは少年に手を振ります。
その時です。
歩くことはもちろん、自分の足で立つことすらできなかった少年が車椅子から立ち上がり、おぼつかない足取りでアレックスの方へ一歩ずつ歩いてきたのです。
あまりの驚きに、アレックスは立ちつくしてしまいました。
そんなアレックスの元へ少年はわずかずつ近寄ってきます。
少年はついにアレックスのところまで歩いて、目の前に立っているのです。
奇跡だ。
アレックスは言葉が出ませんでした。何も言うことができないまま、目の前の少年を抱き寄せました。アレックスの眼からは大粒の涙が溢れています。
僕に会いに来てくれたんだ。カープの選手になっても、僕のことを忘れないで訪ねてきてくれたんだ。
少年の眼からも涙が流れていました。
アレックスと少年は、しばらくの間、何も言葉を交わさずに泣きながら、ただ抱き合っていました。
少年の病状はその日から早い回復を見せ、完治に至るのです。
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