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アピール

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私は30歳になる少し前に離婚したんだ...

その一年半後に現在の女房を紹介されたんです...

高校を出て7年間女房は私の祖母の兄が営む田舎町の店舗に勤めていたんです...

安い給料なのに真面目に働く良い娘だという事だった...

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その店舗はあまり利益が上がらず畳む予定であった...

そこで再就職先を紹介する代わりに私との縁談を持ち込んだのであった...

あまり期待はしていなかったがそれでも女房を見て正直言って断ろうと思った...

こけし人形を思わせる風貌で化粧し慣れていませんと顔に書いてあった...

とても若い女性とは思えないファッションセンスも気持ちを萎えさせた...

だが贅沢も言えないと思い直し適当に話を合わせていた...

暫くしてここは若い二人でという感じで放置された...

女房はモジモジしていたが何かを決心したように核心に触れてきた...

女房「前の奥さんに逃げられたって本当ですか?」

私「…はいそうですよ」

女房「男を作られたって聞いてるんですけれど」

私「…そうなりますね」

女房「職場の人に言い寄られたんですよね?」

随分不躾な事を言い出すなと思った...空気が読めないのかなと...

私が答えずに居ると細い目を思い切り開けて私を見つめ

女房「私は大丈夫ですよ」

私「何がです????」

女房「私は今まで男の人に一度も口説かれた事がないんです」

私「一度も全く?」

女房「そうです...共学だったし知り合う機会も何度かあったのに」

私「???」

女房「んだから安心できますよ!」

女房はドヤ顔をしていた...私は笑ってしまった...

男に相手にされない事が何で自慢になるんだろうと思った...

でも女房のアピールは私の心へのピンポイント攻撃になった...

浮気の可能性がないと言うよりこいつと居ると面白いんだろうなと...

3ヶ月後には同棲を始めすぐに籍を入れた...

女房は必要ないと言ったが半年後に花嫁姿を見たいであろう御両親の事を考え身重な女房と親族だけの神前結婚式を上げる事にした...

裕福ではないが純朴な御両親は私側の親族の前で何度も頭を下げ女房を宜しくと言っていた...

「いい子です...自慢の娘です...高校しか行かせられなかったけど大事に育てました」

それを聞いて女房は大泣きをした・・・
(女房が泣いたのを見たのはこの時だけである)...

化粧が崩れたのを補正するため式が始まる直前に志村けんの馬鹿殿並みの白塗りをした...

変でないかと不安そうに小声で訊ねる女房に何度も「綺麗だよ」と言った...

本当にとても綺麗に見えた...

いつもどこかずれている女房と一緒になって十年余...

子供3人もちょっとあれな感じだが結構幸せである...

本当に・・・。

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本当に泣ける話を集めてみました・・・。


冷たいオムライス
愛する娘




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